白内障手術は片目ずつ?両目同時?メリット・デメリットと向いている人を旭川の眼科医が解説

結論からお伝えすると、白内障手術は片目ずつ行うことが標準的な方法ですが、条件が整えば両目同時手術も選択肢の一つです。どちらが適しているかは、眼の状態・全身の状態・生活環境によって異なります。
この記事では、片目ずつ手術を行う理由・両目同時手術のメリットとデメリット・それぞれの方法が向いている方の特徴を整理しています。旭川市で白内障手術を検討中の方の参考になれば幸いです。
白内障手術は片目ずつが基本:その理由
白内障手術は世界中で年間に大量に行われており、日本でも年間約160万件が実施される身近な手術です。この手術は基本的に片目ずつ、日を分けて行うのが標準的な方法とされています。その主な理由は2つです。
理由①:感染リスクを片目にとどめる
白内障手術は、眼球の内部で行う「内眼手術」に分類されます。超音波で濁った水晶体を砕いて取り除き、小さな切開創(約2〜3mm)から眼内レンズを挿入します。
この切開創から術後眼内炎と呼ばれる重篤な感染症が発生することがごくまれにあります。発生確率は約0.02%と非常に稀ですが、万が一発症した場合は緊急処置が必要となり、適切な対応が遅れると視力に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
片目ずつ手術を行うことで、仮に感染症が発生しても影響を片目にとどめることができます。もう片方の目が正常に機能している状態を保てるため、生活への影響を最小限に抑えられます。これが片目ずつの手術が長年標準とされてきた最大の理由です。
理由②:眼内レンズの度数・種類を微調整できる
片方の目の手術を終えた後、実際の見え方を確認してからもう片方の手術に臨むことができます。
術前にイメージしていた見え方と実際の術後の見え方が異なる場合や、「もう少し近くも見えるようにしたい」という調整が生じた場合、残りの目のレンズ選択に反映できます。また、左右で異なるタイプのレンズを組み合わせる「モノビジョン」を検討するケースでも、片目の結果を確認してから判断できます。
両眼同時手術ではこの微調整の機会がありません。術前にレンズや見え方についての希望をしっかり整理しておくことが、より重要になります。
片目ずつの手術スケジュール
両目の白内障手術を別々に行う場合、2回目の手術は1回目から通常1週間程度空けて行われます。患者さんのご希望や目の状態によっては数日から2週間程度の間隔になることもあります。
手術と手術の間の期間は、1回目の術後経過の確認と2回目の準備を並行して進める大切な時期です。この期間は、1回目の手術を受けた目は術後のダウンタイム中(洗顔・洗髪・点眼継続など)、もう片方の目は手術前の状態が続きます。
この左右の状態のズレが、片目ずつ手術を行う場合の一つの不便な点でもあります。
両目同時手術とは:最近増えてきた選択肢
近年、手術技術・器材・手術室の無菌管理の向上などにより、両目を同じ日に手術する「両眼同時手術(両眼同日手術)」が選択肢として広まっています。左右の目に別々の滅菌器材を使用し、感染リスクに配慮したうえで行われます。十川眼科でも患者さんの状態に応じて対応を検討しています。
両目同時手術のメリット
両眼同時手術には、片目ずつの手術にはないいくつかのメリットがあります。
メリット①:早期に日常生活へ復帰できる
白内障手術後は、感染予防のため洗顔・洗髪・入浴(湯船)・激しい運動などに制限期間が設けられます。片目ずつ手術を行うと、この制限期間が左右2回分発生します。
両眼同時手術であれば制限期間が1回で済み、日常生活への完全復帰までの期間を大幅に短縮できます。手術翌日から両目とも同じように視力が出始めるため、生活への影響も少なくなります。
メリット②:左右の見え方のバランスが取りやすい
片目ずつ手術を行う間の期間、一方は手術済みのクリアな見え方、もう一方は白内障が進んだままの状態が続きます。この左右差が生活に支障をきたすことがあります。
両眼同時手術では手術直後から左右の見え方に大きな差が生じないため、バランスのとれた見え方に早く慣れることができます。特に強度近視や強度遠視の方では片目ずつ手術後の期間に眼鏡が使いにくくなることがあり、両眼同時手術のほうが不便を感じにくいケースがあります。
メリット③:通院回数と費用負担を減らせる
術後の経過観察には複数回の受診が必要です。片目ずつ手術を行うと、この術後通院スケジュールが2セット分になります。通院のたびにかかる交通費・診察料の負担が2倍になることも考慮が必要です。
両眼同時手術では術後通院が1セットで済み、経済的な負担・時間的な負担を抑えられます。仕事や生活スケジュールの調整も1回で完了するため、忙しい方にとって大きなメリットになります。
旭川市のような積雪・凍結が多い冬季には、通院そのものが負担になることもあります。通院回数を減らせるという点は、旭川在住の方にとって特に実感しやすいメリットです。
両目同時手術が向いている方
以下のような方は両眼同時手術が適していることが多いです。
- 高齢の方や身体に不自由があり、複数回の通院が困難な方
- 遠方から通院される方(旭川市近郊以外からご来院の方など)
- 仕事が忙しく、術後のダウンタイムを1回でまとめたい方
- 強度近視や強度遠視があり、片目手術の期間に眼鏡が使いにくくなる方
- 術後の見え方の希望がはっきりしており、レンズ選択に迷いのない方
- 旭川の冬季に複数回通院することが難しい方
両目同時手術が向いていない・適応外となる可能性がある方
以下に当てはまる方は、両眼同時手術が難しいと判断されることがあります。詳細は術前の診察でご確認ください。
- 白内障と同時に緑内障手術・網膜手術が片眼に予定されている場合
- 水晶体を支えるチン小帯が弱い方
- 角膜混濁などによる難症例の白内障手術となる場合
- レーシックなど過去に屈折矯正手術を受けており、片眼ずつ結果を確認したい方
- 腰・首の状態が悪く、仰向けの姿勢に困難がある方
- パニック障害・閉所恐怖症などで特別な対応が必要な方
- 認知症などで手術中の意思疎通・姿勢保持が難しい方
- 多焦点眼内レンズやモノビジョンを希望する方
- 前立腺肥大症の治療薬を内服している方
- 80歳以上の方(チン小帯の脆弱など不適応となる条件が多くなるため)
片目だけの白内障手術について
両目の白内障が進んでいても、手術は片目だけという選択もできます。多くの場合は進行が著しい方から手術を行い、数年後にもう片方の手術を受けるというケースも珍しくありません。
片目だけ手術した目としていない目では、同じ視力でも見え方の質に差が出ることがあります。手術していない目は、かすみ・黄みがかった見え方・まぶしさなどが残ります。この左右差が日常生活に支障をきたすようであれば、もう片方の手術も検討することをおすすめします。
また、外傷性白内障や片目だけに急速に進行する白内障(糖尿病・アトピー性皮膚炎・ステロイド薬の長期使用などが原因)の場合は、もともと片目だけに手術が必要なケースもあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 白内障手術は必ず片目ずつしないといけませんか?
片目ずつの手術が標準的な方法ですが、両眼同時手術も選択肢の一つです。感染リスクの分散・レンズの微調整機会という観点から片目ずつが基本とされていますが、条件が整えば両眼同時手術も安全に行えます。どちらが適しているかは眼の状態や全身の状態・生活環境をもとに担当医師とご相談ください。
Q2. 片目ずつ手術する場合、2回目はいつになりますか?
1回目の手術から通常1週間程度の間隔を空けて2回目を行うことが多いです。術後の経過や患者さんのご希望によって数日〜2週間程度の範囲で調整することもあります。具体的なスケジュールは術前の診察でご相談ください。
Q3. 片目の手術が終わってから次の手術まで、生活に支障はありますか?
片目が手術済みの状態ともう片方が術前の状態が並行する期間は、左右の見え方に差が生じることがあります。特に強度近視や強度遠視の方は術前に使用していた眼鏡が使いにくくなることがあります。不便を感じる場合は担当医師にご相談ください。
Q4. 両眼同時手術は保険適用になりますか?
手術自体の保険適用の扱いは片目ずつの手術と同様です。単焦点眼内レンズを使用した白内障手術は保険適用で受けられます。費用の詳細については診察時にご確認ください。
Q5. 白内障手術は片目だけで終わりにしてもいいですか?
片目のみの手術で終わりにすることは可能です。もう片方の目の状態・視力・日常生活への支障の程度をもとに判断します。手術していない目の白内障が進行した際に改めて手術を検討することもできます。ご自身の状況を担当医師と丁寧に相談しながら決めることが大切です。
旭川で白内障手術のご相談は十川眼科へ
十川眼科は旭川市緑が丘に位置する眼科クリニックです。白内障の診断・経過観察・手術まで一貫して対応しています。片目ずつの手術と両眼同時手術のどちらが適しているかについても、眼の状態・全身の状態・生活スタイルを丁寧に伺ったうえでご提案します。
「両目同時にできますか?」「手術の間隔はどのくらいですか?」など、手術方法に関するご質問も診察の際にお気軽にお申し付けください。
【院長コメント】片目ずつか両目同時か、私が大切にしている考え方
外来でよくいただく質問のひとつが「両目一緒にできますか?」というものです。
基本は片目ずつです。感染症が万が一起きた場合に片目だけにとどめられること、術後の見え方を確認してもう片方のレンズを調整できることの2点が、長年この方法が標準とされてきた理由です。
一方で、高齢で通院が困難な方や、旭川の冬季に複数回の通院が難しい方には、両眼同時手術を検討することがあります。大切なのは「どちらが正解か」ではなく、「その方の状態と生活に何が最も合っているか」です。
また、片目の手術だけで終わりにしたいというご希望も尊重しています。「まずは悪い方だけやってみて、生活してみてから考えましょう」という進め方で十分なケースも多くあります。
手術は患者さんご自身が受けるものです。「どうすればいいですか?」とおまかせにするのではなく、選択肢のメリットとデメリットをしっかり理解したうえで決めていただけるよう、丁寧なご説明を心がけています。迷っていることがあれば、何でも診察の場でお聞かせください。
十川眼科 院長 十川健司(日本眼科学会専門医・医学博士)
まとめ
白内障手術は片目ずつ行うことが標準的な方法で、感染リスクの分散とレンズの微調整機会の確保という2つの理由から長年この方法が選ばれています。一方、両眼同時手術は早期の日常生活復帰・左右のバランスの安定・通院回数の削減というメリットがあり、条件が整えば安全に行える選択肢です。
どちらが適しているかは眼の状態・全身の状態・生活スタイルによって異なります。「片目だけで終わりにする」という選択肢もあります。手術前に担当医師と十分に相談し、自分の生活に合った方法を選ぶことが最も大切です。


