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硝子体手術は入院不要|日帰りで受けられる最新治療法

硝子体手術とは?日帰りで受けられる?入院が必要?

眼科手術の中でも高度な技術を要する硝子体手術。かつては入院が必須とされていましたが、現在では日帰りで受けられるようになっています。

眼の健康は私たちの生活の質に直結する重要な要素です。網膜剥離や黄斑円孔といった深刻な眼疾患に対する治療法として、硝子体手術は欠かせない選択肢となっています。この手術は眼球内部の硝子体という透明なゲル状の組織を取り除き、網膜の機能を回復させるための高度な処置です。

硝子体手術とは?日帰り治療の実現背景

硝子体手術は、眼球内にある硝子体を切除し網膜の機能を回復させるための手術です。眼科分野でも最も難しい手術の一つとされています。

この手術は、網膜前膜、糖尿病網膜症、黄斑円孔、網膜剥離、硝子体出血など、さまざまな眼疾患の治療に用いられています。かつては技術的な制約から入院が必須でしたが、医療技術の進歩により状況は大きく変わりました。

手術装置の発達や手術手技の進歩により、日帰りでの網膜・硝子体手術が可能となりました。特に小切開硝子体手術の登場は、患者さんの負担を大きく軽減しています。

従来は3.0mm程度の切開が必要でしたが、現在では0.5mm程度の極小切開で手術が可能になっています。

このような技術革新により、回復が早くなり、日帰り手術が実現したのです。

硝子体手術が必要となる主な眼疾患

硝子体手術が適応となる代表的な疾患をいくつか見ていきましょう。

網膜前膜

網膜の表面に膜が形成される病気で、視力低下や歪みの原因となります。

糖尿病網膜症

糖尿病の合併症として網膜の血管に障害が生じる疾患です。進行すると失明のリスクが高まるため、適切な時期の手術が重要です。

黄斑円孔

網膜の中心部である黄斑に穴があく病気で、中心視力の低下を引き起こします。

網膜剥離

網膜が眼球の壁から剥がれる緊急性の高い疾患で、早期の手術が必要です。

硝子体出血

眼の中で出血が起こり、視界が濁る状態です。原因によっては自然に吸収されることもありますが、改善しない場合は手術が必要になります。

これらの疾患はいずれも視力に重大な影響を及ぼすため、適切な診断と治療が欠かせません。

合わせて読みたい:網膜剥離の初期症状と対処法|眼科医が解説する早期発見のポイント

日帰り硝子体手術のメリットと注意点

日帰り硝子体手術のメリット

入院の必要がない

硝子体手術後、自宅で過ごせる安心感があります。

地元の専門クリニック受けられる

入院設備のある大きな病院まで通う必要がなく、専門クリニックで受けられる利便性も大きな魅力です。

費用が抑えられる

医療費の面でも入院費が不要となるため、経済的負担が軽減されます。特に70歳以上の方は、入院に比べて自己負担額が20%程度少なくなるというメリットもあります。

痛みが少ない

手術は局所麻酔でほとんど痛みもなく、短時間で終了します。

日常生活への影響

手術前の絶食・休薬や長期間の術後安静の必要がなく、日常生活への影響も最小限に抑えられます。

日帰り硝子体手術の注意点

すべての方に日帰り手術が適しているわけではない

重い全身疾患を患っている場合や、重傷度の高い外傷や増殖性疾患で長時間の手術が予想される場合は、入院での手術が推奨されることがあります。

また、重度の認知症を有している方も日帰り手術には適さない場合があります。

日帰り硝子体手術の安全性と成功率について

日帰り硝子体手術の安全性と成功率は、医師の技術と経験、そして設備の充実度に大きく依存します。

十川眼科では年間1,000件以上の手術実績があります。当院は眼疾患全般に対応可能で豊富な経験に基づいた安全な手術を提供しております。

手術の成功率は疾患の種類や重症度によって異なりますが、適切な時期に適切な技術で行われた手術は、視力の改善や維持に大きく貢献します。

ただし、すべての手術にはリスクが伴うことも事実です。当院では手術前にリスクと期待される効果について十分な説明を行い、患者さんに理解していただいた上で手術を行なっております。

日帰り硝子体手術の流れと準備

日帰り硝子体手術を受ける際の流れ

術前検査

手術の1〜2週間前に詳しい検査を行います。眼の状態を精密に計測するだけでなく、全身状態の確認も行われます。この時点で手術の詳細説明と手術前後のオリエンテーションがあります。

手術当日

来院後に目薬などの事前処置を行ってから手術室に入ります。手術時間は症例によって異なりますが、30分〜1時間程度かかることが一般的です。

硝子体手術と白内障手術

硝子体手術を行うと、多くの場合で白内障の急速な進行が認められます。そのため、ほとんどの症例で硝子体手術と白内障手術を同時に行うことが一般的です。これにより、硝子体手術がより安全、確実に行えるようになります。

症例によっては、切除した硝子体の代わりに内部から網膜を抑えるために空気や特別なガスを眼内に入れて手術を終える場合があります。

ガスを眼内に入れた場合、手術後にうつぶせの姿勢をとっていただくこともあります。これは網膜を適切な位置に保つために重要な処置です。

術後のケアと注意点

手術後は、目の状態が安定するまでの約1〜2ヶ月間の点眼加療と定期検査が重要です。

通常は手術翌日、1週間後、2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後といった期間で検査を受けていただきます。術後の状態により、お薬の内容が変わることもあります。

術後の注意点としては、激しい運動や重い物の持ち上げを避けること、指示された姿勢を保つこと、感染予防のための清潔保持などが挙げられます。

当院の日帰り硝子体手術の特徴

旭川市を拠点とする十川眼科では、地域の皆様に日帰り硝子体手術を提供しています。

当院では、低濃度笑気麻酔を導入しております。これにより、痛みや不安を和らげ、安心して手術を受けていただけるよう配慮しています。

また、手術前に待機する部屋を個室で3室設けており、約4畳半の広々とした空間で、リラックスしていただけるよう、各部屋にはリクライニングのソファーやテレビを設置しています。

手術に関しては、院長の私より全ての患者さんに丁寧な説明を心がけております。

さらに、手術後の患者様を駅まで送るサービスも提供しており(事前相談が必要です)、患者さんの負担軽減に努めています。

硝子体手術の費用と保険適用について

硝子体手術の費用は、保険適用となる場合がほとんどです。

健康保険を使った場合の自己負担額

健康保険を使った場合は、年齢や所得によって異なります。

3割負担の方

5〜10万円程度

1割負担の方

後期高齢者医療制度を利用する方では2〜3万円程度が目安となります。

どちらも硝子体手術単独の場合の目安であり、白内障手術を同時に行う場合は追加費用が発生します。また、使用する眼内レンズの種類によっても費用は変わってきます。

白内障手術の費用

3割負担の方で45,000円〜60,000円(片眼)

2割負担の方で18,000円(片眼)

1割負担の方で8,000円~18,000円(片眼)

多焦点眼内レンズを選択する場合は保険適用外となりますが、医療費控除や高額医療費制度を利用できる場合があります。

医療費控除と高額医療費制度の活用法

医療費の負担を軽減するための制度として、医療費控除と高額医療費制度があります。

医療費控除は、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告をすることで所得税の一部が還付される制度です。

高額医療費制度は、1ヶ月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に、超えた分が後から払い戻される制度です。年齢や所得によって自己負担限度額が異なります。

これらの制度を活用することで、硝子体手術などの高額な医療費の負担を軽減することができます。

事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払いが自己負担限度額までで済むため、一時的な負担も軽減されます。

関連リンク: 限度額適用認定証とは?

よくある質問と回答

硝子体手術に関するよくある質問とその回答をまとめました。

Q1: 硝子体手術は痛いですか?

A1: 手術は局所麻酔で行われるため、手術中の痛みはほとんどありません。当院では低濃度笑気麻酔も導入しており、不安や緊張も和らげることができます。術後に軽い異物感や痛みを感じることがありますが、処方された点眼薬で対処できることがほとんどです。

Q2: 手術当日の運転は可能ですか?

A2: 手術当日の運転は避けてください。手術後は片目に眼帯をすることが多く、深部感覚が低下するため危険です。公共交通機関や家族の送迎、タクシーなどを利用することをお勧めします。当院では、事前相談により駅までの送迎サービスも行っています。

Q3: 術後はどのくらいで普通の生活に戻れますか?

A3: 症状や手術内容によって異なりますが、基本的な日常生活は翌日から可能です。ただし、激しい運動や重い物の持ち上げ、入浴(シャワーは可)などは1〜2週間避けることが推奨されます。また、ガスを注入した場合は、指示された姿勢を一定期間保つ必要があります。

Q4: 硝子体手術と白内障手術を同時に行うのはなぜですか?

A4: 硝子体手術を行うと白内障が急速に進行することが多いため、同時に行うことで再手術の必要性を減らせます。また、白内障手術を先に行うことで、硝子体手術時の視界が良くなり、より安全で確実な手術が可能になります。

Q5: 術後に気をつけるべきことは何ですか?

A5: 処方された点眼薬を指示通りに使用すること、定期的な検診を欠かさないこと、激しい運動や重い物の持ち上げを避けること、清潔を保つことなどが重要です。また、急な痛みや視力低下、充血の悪化などの異常を感じたら、すぐに医療機関に連絡してください。

まとめ:安心して受けられる日帰り硝子体手術

硝子体手術は、かつては入院が必須の大掛かりな手術でしたが、医療技術の進歩により日帰りで受けられるようになりました。

網膜剥離や黄斑円孔、網膜前膜、糖尿病網膜症など、さまざまな眼疾患の治療に用いられるこの手術は、適切な時期に受けることで視力の維持や改善に大きく貢献します。視力の維持・改善のために、最新の医療技術を活用した日帰り硝子体手術を検討してみてはいかがでしょうか。

詳しい情報や診察のご予約は、十川眼科までお気軽にお問い合わせください。

著者情報

医療法人光健会 理事長 十川健司

  • 日本眼科学会専門医・網膜硝子体学会所属
  • 医学博士・眼科手術学会所属
  • 視覚障害者用補装具適合判定医
  • ボトックス施注資格認定医