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リジュセア®の効果とは?小児近視進行抑制の仕組みを眼科専門医が解説

お子さんの近視、進行を抑えられるリジュセアとは

文部科学省の調査では、裸眼視力1.0未満の子どもの割合が年々増加しており、2024年度には小学校で36.8%、中学校で60.6%、高等学校では71.1%という結果が示されています。つまり、高校生の約7割が視力1.0未満という時代なのです。

近視は単なる「見えにくさ」の問題ではありません。眼軸長(目の奥行き)が伸びることで起こる近視は、将来的に緑内障や網膜剥離、黄斑変性といった深刻な眼疾患のリスクを高める可能性があります。一度伸びた眼軸は元に戻らないため、小児期の段階で進行を抑えることが極めて重要です。

この記事では、日本で初めて「小児近視進行抑制」を効能・効果として厚生労働省の承認を受けた「リジュセア®ミニ点眼液0.025%」について、その効果や作用機序、実際の治療の流れまで、眼科専門医の視点から詳しく解説します。

リジュセア®ミニとは?日本初の承認を受けた近視進行抑制点眼薬

「リジュセア®ミニ点眼液0.025%」は、参天製薬が開発した低濃度アトロピン(0.025%)を有効成分とする点眼薬です。2024年12月に厚生労働省から製造販売承認を取得し、2025年4月21日に発売されました。

この点眼薬の最大の特徴は、日本で初めて「近視の進行抑制」を効能・効果として正式に承認された医薬品であるという点です。

従来のマイオピンとの違い

これまで多く使用されてきた「マイオピン」は、海外で製造された低濃度アトロピン点眼薬でした。リジュセア®ミニは国内で開発・製造された点眼薬であり、同濃度のマイオピン®0.025%と同等のアトロピン濃度を含んでいます。

用法・用量も「1日1回、1回1滴、就寝前に点眼する」という点で同様ですが、リジュセア®ミニは厚生労働省の正式な承認を受けているという点で大きく異なります。

防腐剤フリーの一回使い切りタイプ

リジュセア®ミニは、防腐剤を含まない0.3mLの一回使い切り容器で提供されます。小児の長期治療を考慮した設計で、衛生的かつ取り扱いが容易です。1箱に30本入っており、1か月分として処方されます。

使い捨てタイプのため、残液を再利用する心配がなく、常に新鮮な状態で点眼できる点も保護者の方々から評価されています。

リジュセア®の臨床結果

リジュセア®ミニの有効性は、日本国内34施設で実施された大規模臨床試験「ORANGE STUDY」によって科学的に実証されています。

臨床試験の概要

この試験では、5歳から15歳の小児299名を対象に、リジュセア®ミニを毎晩点眼したグループと、成分の入っていない偽薬(プラセボ)を使用したグループを比較しました。24か月間の投与後、以下のような有意な近視進行抑制効果が確認されたのです。

等価球面度数(メガネの度数)での効果

プラセボ群と比較して、約0.64D分の進行を抑制しました。これは近視の進み方が約39%抑えられたことを意味します。統計的にも極めて有意な結果(p<0.0001)です。

つまり、何もしなければ2年間で進んでしまう近視の約4割を抑えられるということです。これは臨床的に非常に意味のある数値と言えます。

眼軸長(眼の奥行き)での効果

プラセボ群に比べて約0.23mm分の伸びを抑制し、眼軸の伸びが約32%抑えられました。こちらも統計的に有意な結果(p<0.0001)です。

眼軸長は一度伸びると元に戻らないため、この抑制効果は将来にわたって持続する利益となります。強度近視になるリスクを減らし、それに伴う眼疾患のリスクも低減できる可能性があるのです。

3年目の継続効果とリバウンド

さらに注目すべきなのが、治療を3年目まで継続した場合のデータです。点眼治療を継続していたお子さんでは、近視進行抑制の効果が維持されていることが確認されました。一方で、途中で点眼を中止した場合には、近視の進行速度が一時的に速まる傾向が報告されています。

この現象は一般に「リバウンド」と呼ばれますが、Orange Studyでは「中止後にわずかな近視進行の再加速はみられたものの、臨床的に大きな意味を持つものではない」と結論づけられています。

つまり、点眼中止によって深刻な悪化が起こるわけではありませんが、安定した抑制効果を維持するためには、医師の管理のもとで治療を継続することが重要です。自己判断で中止するのではなく、成長や近視の進行状況を見ながら、適切なタイミングを相談していくことが肝要といえるでしょう。

リジュセア®ミニでなぜ近視進行を抑えられるのか

ムスカリン受容体への作用

主成分であるアトロピンは、網膜や強膜に存在する「ムスカリン受容体」に作用します。この受容体は眼軸の伸長に関与していると考えられており、アトロピンがこれをブロックすることで、強膜のリモデリング(再構築)を抑制し、眼軸の伸びを防ぐと推測されています。

後部強膜への選択的到達

リジュセア®ミニの製剤設計では、薬効ターゲット想定部位である「後部強膜」への移行性を高めることで有効性の向上を図っています。同時に、虹彩・毛様体への移行性を抑制することで、瞳孔への影響を軽減しているのです。

これにより、散瞳(瞳孔が開く)や調節麻痺(ピント調節機能の低下)による日常生活への影響を最小限に抑えながら、近視進行抑制効果を発揮できるよう設計されています。

調節麻痺作用との違い

従来の高濃度アトロピン(1%)は、調節麻痺作用が強く、まぶしさや近くが見えにくいといった副作用が問題でした。しかし、0.025%という低濃度では、目の遠近調節機能にほとんど影響を与えません。

そのため、日常生活を送りながら治療を継続できるのです。学校での授業やスマートフォンの使用、読書など、通常の活動に支障をきたすことはほとんどありません。

リジュセア®治療の対象となるお子さんと診療の流れ

リジュセア®ミニによる治療は、すべてのお子さんが対象というわけではありません。適応条件と実際の診療の流れを見ていきましょう。

治療対象となる方

以下の条件を満たす方が治療対象となります。

  • 毎日就寝前に点眼が可能な方
  • 3か月ごとの定期通院が可能な方

中学生や高校生からでも治療開始は可能です。18歳以降も近視が進行するケースが報告されているため、医師が適応と判断すれば治療を開始できます。

初診から治療開始までの流れ

初診時は保険診療で検査と診察を行い、近視の有無と治療適応について判断します。必要に応じて、調節麻痺薬での屈折検査や眼鏡処方なども実施します。

治療開始時には、点眼薬の説明と同意確認の上、リジュセア®ミニ点眼液を1か月分(1箱)処方します。1か月後に検査および診察で継続可能か判断し、問題がなければ3か月分の点眼薬を処方する流れとなります。

定期検査の重要性

以降は3か月ごとの定期検査を行い、眼軸測定を定期的に実施します。この定期検査は治療効果を確認し、副作用の有無をチェックするために欠かせません。

定期検査や治療指示を守れない場合は、医師の判断で治療を中止することもあります。お子さんの将来の目の健康のためにも、保護者の方のサポートが不可欠です。

治療期間はどのくらい?

近視の進行は成長期に著しいため、一般的には10代後半までの継続が推奨されます。まずは2年間点眼していただき、効果を見るのが望ましいと考えます。

ORANGE STUDYの結果からも、3年目も継続することで効果が維持されることが示されています。

リジュセア®の費用について

リジュセア®ミニ点眼液0.025%は、薬価基準未収載医薬品のため、健康保険等の公的医療保険の給付対象外(自由診療)となります。

なぜ保険適用外なのか?

厚生労働省の承認は受けていますが、薬価基準に収載されていないため、健康保険の適用外となっています。そのため、診察・検査・薬剤費用などすべてが自己負担です。

具体的な費用の目安

当院での診療費用は以下の通りです(施設によって異なる場合があります)。

  • 検査:1,430円(税込)
  • 処方(リジュセア®ミニ点眼液0.025%):4,000円(税込)/1箱(30日分)

リジュセア®の副作用と安全性

どんな薬にも副作用のリスクはあります。リジュセア®ミニの副作用と安全性について、正確な情報をお伝えします。

報告されている主な副作用

5%以上の方に「羞明(まぶしさ)」が認められています。また、霧視(かすみ目)や調節障害(近くが見えにくい)などの症状も報告されています。

これらは主成分であるアトロピンの調節麻痺作用や散瞳作用に起因する一時的な反応と考えられます。就寝前に点眼しても、翌日までまぶしさやかすみを感じることがあるのです。

全身への影響は?

現在のところ、全身への重篤な副作用は報告されていません。低濃度であるため、全身への影響は極めて限定的です。

ただし、薬や食べ物にアレルギーがある方、緑内障や狭隅角、浅前房など眼圧に異常がある方、他に服用中・点眼中の薬がある方は、事前に必ず医師にご相談ください。

副作用が気になる場合の対処法

通常、点眼時間の調整によって症状が軽減できることもあります。調整してもなおまぶしさやピントの合わない症状が持続する場合には、より濃度の低いマイオピン®0.01%への変更をご提案することもあります。

気になる症状がある場合は、自己判断で中止せず、必ず医師にご相談ください。お子さんの状態に合わせた最適な治療法を一緒に考えていきましょう。

リジュセア®と他の治療法との併用

リジュセア®ミニは、他の近視進行抑制治療や視力矯正方法と併用できる点も大きなメリットです。

眼鏡・コンタクトレンズとの併用

眼鏡やコンタクトレンズとの併用は問題ありません。コンタクトレンズを使用している場合は、レンズを外した後に点眼してください。

視力矯正をしながら、同時に近視の進行を抑えることができるのです。日常生活の質を保ちながら、将来のリスクを減らせる点は大きな利点と言えます。

オルソケラトロジーとの併用

オルソケラトロジー治療との併用も可能で、相乗効果により更なる近視進行予防が期待されます。オルソケラトロジーは、特殊なコンタクトレンズを就寝時に装用することで角膜の形状を一時的に変化させ、日中は裸眼で過ごせるようにする治療法です。

よくある質問

Q1. リジュセア®で視力は回復しますか?

リジュセア®ミニ点眼液は近視の進行を抑制するための治療であり、進んだ近視を弱めたり、視力を回復させたりすることはできません。あくまで「これ以上悪くならないようにする」治療です。

Q2. リジュセア®で効果の無い方もいますか?

薬剤の効果には個人差があり、すべての患者さんに同じような効果が得られるわけではありません。治療効果が不十分な場合には、他の治療法との併用や治療方針の見直しが検討されます。定期的な検査で効果を確認しながら、最適な治療を続けることが大切です。

Q3. マイオピン点眼液からリジュセア®に移行はできますか?

マイオピン点眼液をご使用中の患者様は、リジュセア®ミニ点眼液への移行が可能です。同濃度のマイオピン®0.025%点眼は終売しており、当院での取り扱いも終了いたしましたので、今後は順次リジュセア®ミニ点眼液への切り替えをご案内しております。

Q4. リジュセア®の点眼を忘れてしまったらどうすればいいですか?

1日忘れた程度であれば大きな問題はありませんが、頻繁に忘れると効果が十分に得られない可能性があります。毎晩の習慣として定着させることが重要です。就寝前の歯磨きと一緒に行うなど、ルーティン化することをおすすめします。

Q5. リジュセア®を家族や兄弟間で使いまわすことはできますか?

絶対にしないでください。点眼薬の使いまわしは、感染症のリスクがあるだけでなく、個々の患者さんに合わせた治療が行えなくなります。必ず処方された本人のみが使用してください。

まとめ〜お子さんの未来の目の健康のために

リジュセア®ミニ点眼液0.025%は、日本で初めて「小児近視進行抑制」を効能・効果として厚生労働省の承認を受けた画期的な点眼薬です。

ORANGE STUDYで実証された約39%の近視進行抑制効果、約32%の眼軸長伸展抑制効果は、統計的にも臨床的にも極めて意義のある結果です。防腐剤フリーの一回使い切りタイプで衛生的、かつ日常生活への影響を最小限に抑えた設計となっています。

自由診療のため費用負担はありますが、将来的な強度近視や眼疾患のリスクを考えると、予防的投資としての価値は十分にあると考えます。眼鏡やコンタクトレンズ、オルソケラトロジーとの併用も可能で、お子さんの状態に合わせた最適な治療プランを提案できます。

近視は進行してしまうと元に戻せません。しかし、適切な時期に適切な治療を開始することで、進行を抑え、お子さんの未来の目の健康を守ることができるのです。

お子さんの近視進行にお悩みの保護者の方は、ぜひ一度十川眼科にご相談ください。

著者情報

医療法人光健会 理事長 十川健司

  • 日本眼科学会専門医・網膜硝子体学会所属
  • 医学博士・眼科手術学会所属
  • 視覚障害者用補装具適合判定医
  • ボトックス施注資格認定医