1. ホーム
  2. コラム
  3. オルソケラトロジーとは?仕組みから効果まで眼科専門医が徹底解説

オルソケラトロジーとは?仕組みから効果まで眼科専門医が徹底解説

オルソケラトロジーとは何か

「オルソケラトロジー」という言葉を初めて耳にする方も多いかもしれません。

オルソケラトロジーは、特殊な形状のハードコンタクトレンズを就寝中に装用し、角膜の形状を一時的に変化させることで視力を矯正する治療法を指します。ギリシャ語で「オルソ(矯正)」「ケラト(角膜)」「ロジー(療法)」を組み合わせた言葉で、まさに「角膜矯正療法」という意味になります。

この治療法の最大の特徴は、日中は裸眼で過ごせるという点です。朝起きてレンズを外せば、メガネやコンタクトレンズなしで快適に生活できます。アメリカでは30年以上の研究歴史があり、FDA(米国連邦食品医薬品局)やCEマーク、そして日本でも厚生労働省から認可を受けている信頼性の高い治療法なのです。

オルソケラトロジーを行っている十川眼科大町院のサイトはこちら:WEBサイトを見る

オルソケラトロジーの仕組み:角膜を変形させる科学

どうやって寝ている間に視力が回復するのか?

オルソケラトロジーレンズの内側には、複数の段階的なカーブが施されています。このリバースジオメトリーと呼ばれる特殊な形状が鍵となります。レンズ中心部が周辺部よりも平坦になっているため、装用すると角膜中心部を優しく圧迫する構造になっているのです。

角膜は比較的柔軟な組織で、形状が変わりやすい特性を持っています。就寝中にレンズを装用すると、角膜上皮細胞が圧迫部で薄くなり、同時に周囲の非圧迫部に再分布して角膜上皮厚が増加します。この変化により角膜全体のカーブが平坦化し、屈折率が調整されるのです。

近視の状態では、焦点が網膜より手前で結ばれるためにぼやけて見えます。しかしオルソケラトロジーによって角膜が平坦化されると、焦点が網膜上に正しく結ばれるようになり、クリアな視界が得られるわけです。

効果の持続時間と安定化

一度形状が変わった角膜は「くせづけ」がされ、レンズを外しても一定期間その形状を維持します。

毎晩6時間以上レンズを装用することで、日中の効果持続時間を最高36時間まで伸ばすことができます。装用開始から1か月ほどで視力が安定してくるのが一般的です。ただし治療初期は、見えたり見えなかったりする日があったり、夕方まで効果が持続しないこともあります。これは正常な経過ですので、焦らず継続することが肝要です。

オルソケラトロジーの適応条件と効果範囲

すべての近視に対応できるわけではありません。

基本的な適応度数は「-4.00Dまでの近視(中等度)、-1.50D以下の乱視(軽度)」とされています。強度近視や強度乱視の場合、従来のオルソケラトロジーでは十分な矯正効果が得られないケースがあります。ただし近年では、強度近視や強度乱視に対応した新しいレンズも開発されており、適応範囲は徐々に広がっています。

乱視への効果について

実は、オルソケラトロジーは近視だけでなく乱視にも効果が期待できます。

特に角膜乱視に対しては、角膜を平坦化させることが角膜の歪みに影響を与えるため、治療の過程で乱視が改善した症例が報告されています。近視性乱視をお持ちの方には、一石二鳥の効果が得られる可能性があるのです。

ただし注意が必要なのは、水晶体乱視には効果が期待できないという点です。乱視には角膜乱視と水晶体乱視があり、オルソケラトロジーで対応できるのは角膜乱視のみとなります。海外では乱視特化型のレンズも登場しており、日本でも「ブレスオーコレクトTD」など、角膜乱視が1.50D以上の患者さんに対応した特別注文品が利用可能になってきています。

オルソケラトロジーは子どもの近視進行抑制に特に効果的

成人と比較して子どもの角膜は柔軟性が高いため、矯正効果が出やすく、治療開始が早いほど良好な結果が得られる傾向にあります。成長期に突入する6歳頃からの開始が推奨されます。親のサポートがあれば、6歳程度から治療を受けられます。

近視進行抑制のメカニズム

オルソケラトロジーを続けることで、近視の進行を抑制する効果が期待できます。

これは単なる視力矯正以上の価値があります。近視が進行すると、将来的に網膜剥離、近視性網膜症、緑内障、白内障などのリスクが高まることが知られています。厚生労働省の研究報告書によると、失明者の原因疾患の6.5%は病的近視であり、緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性に次ぐ第4位です。

学童期に近視進行を抑制できれば、青年期以降の社会活動におけるQOL(生活の質)が維持できるだけでなく、重篤な眼疾患による失明リスクを軽減できる可能性があります。2050年までに世界の近視人口は約47.6億人に達すると試算されており、近視進行抑制は世界的にも最重要課題となっているのです。

オルソケラトロジーのメリットとデメリット

オルソケラトロジーの主なメリット

日中は裸眼で生活できるという点が最大の利点です。

専用レンズを装用するのは夜間就寝中だけですので、日中はメガネやコンタクトレンズを装用する煩わしさから解放されます。スポーツを楽しむ方、水泳やマリンスポーツをされる方、職業上メガネやコンタクトレンズの装用が難しい方には特におすすめです。

角膜を傷つけないことも重要なポイントです。レーシックのように角膜を削る手術ではないため、角膜に永久的なダメージを与えることはありません。装用を中止すれば2週間〜1か月程度で角膜が元の状態に戻ります。この「可逆性」は、将来的に他の治療法を選択したい場合や、健康上の理由で治療を中止する必要が生じた場合に大きな安心材料となります。

また、子どもから高齢者まで幅広い年齢層が受けられる点も見逃せません。レーシックと違って対象年齢は幅広く、適応年齢は10歳〜65歳位までとされています。特に成長期の子どもに対しては、近視進行抑制効果が期待できるため、早期からの開始が推奨されます。

オルソケラトロジーの考慮すべきデメリット

レンズの装用を継続しなければならないという点は理解しておく必要があります。

オルソケラトロジーはあくまで一時的に角膜の形を変えるだけですので、レンズの装用を止めれば視力は元に戻ってしまいます。矯正効果を維持するには、レンズの装用を継続しなければなりません。また、定期的に医師の検診を受ける必要があります。

装用開始初期は視力が安定しにくいこともあります。角膜の形状が安定するには時間がかかり、装用を開始した始めの頃は良く見えたり見えなかったりします。装用を続けることで視力は徐々に安定していきますので、この期間は辛抱が必要です。

さらに、強度近視や強度乱視の矯正は難しいです。

オルソケラトロジーと他の近視矯正方法との比較

視力矯正の選択肢は多様です。

メガネ、コンタクトレンズ、レーシック、ICL(眼内コンタクトレンズ)など、それぞれに特徴があります。オルソケラトロジーと他の矯正方法を比較すると、以下のような違いがあります。

メガネとの比較

メガネは手軽にかけたりはずしたりできる点が長所です。目のトラブルが起こるリスクも少なく、安全性が高い方法といえます。しかし視野が狭くなる、スポーツや運動の時に不便といった短所があります。

通常のコンタクトレンズとの比較

通常のコンタクトレンズはメガネに比べて視界が広く、強度近視・乱視・遠視でも矯正ができます。ただし日中は手軽につけはずしができず、小さい子供の使用が難しい、激しいスポーツには不向きといった制約があります。

視力矯正手術(レーシック、ICL)との比較

レーシックやICLは常に裸眼で過ごすことができ、コンタクトレンズのようなレンズケアやつけはずしの手間がかかりません。

しかし手術によって角膜を削ったり切開する必要があり、18歳未満の場合は手術を受けられません。レーシックは一度削った角膜は元に戻せないため、将来的に問題が生じた場合の対応に制約があります。ICLは挿入した眼内コンタクトレンズがズレたり、必要度数に関わる問題が生じた場合、再手術が必要になります。

オルソケラトロジーは手術不要で、治療を中止すれば元に戻る可逆性があるため、特に成長期の子どもや手術に抵抗がある方には優れた選択肢となります。

オルソケラトロジーで効果が見られない場合の対処法

すべての方に効果があるわけではありません。

オルソケラトロジーで十分な効果が得られない場合でも、他の矯正方法があります。乱視には、角膜や水晶体の歪み方が一定方向である「正乱視」と、歪み方に一定性がなく不規則に凸凹している「不正乱視」があり、それぞれで対応方法が異なります。

正乱視の場合

正乱視であれば、以下の方法で矯正が可能です。

  • メガネ
  • コンタクトレンズ
  • 角膜屈折矯正手術(レーシック)
  • ICL(眼内コンタクトレンズ)

不正乱視の場合

不正乱視の場合は選択肢が限られますが、以下の方法があります。

  • ハードコンタクトレンズ+涙液
  • ICL(程度による)

オルソケラトロジーで効果が見られない場合でも、このように対応方法はありますので、専門医に相談してみましょう。

オルソケラトロジーを行っている十川眼科大町院のサイトはこちら:WEBサイトを見る

よくある質問(Q&A)

Q1: オルソケラトロジーは痛くないですか?

装用初期は異物感を感じることがありますが、ほとんどの方は数日で慣れます。就寝中に装用するため、起きている間の不快感はありません。適切なフィッティングが行われていれば、痛みを感じることはほとんどありません。

Q2: オルソケラトロジーの効果はどのくらいで実感できますか?

個人差がありますが、多くの方は装用開始から数日〜1週間程度で視力改善を実感し始めます。安定した視力が得られるまでには約1か月かかります。初期は見えたり見えなかったりすることもありますが、継続することで徐々に安定してきます。

Q3:  オルソケラトロジーレンズのケアは難しいですか?

オルソケラトロジーのレンズは特殊な形をしているため汚れやすいですが、専用のケース、洗浄液、保存液を使用すれば、通常のハードコンタクトレンズとほぼ同じ取り扱いです。クリニックから適切な指導が行われますので、指示に従ってケアを行えば問題ありません。

Q4:  オルソケラトロジーの費用はどのくらいかかりますか?

オルソケラトロジーは自由診療のため、クリニックによって費用が異なります。一般的には初期費用として両眼で15万円〜20万円程度、その後は定期検診費用とレンズ交換費用(2〜3年ごと)がかかります。詳細は各クリニックにお問い合わせください。

Q5:  オルソケラトロジーの治療を中止したらどうなりますか?

治療を中止すると、2週間〜1か月程度で角膜が元の状態に戻り、視力も元に戻ります。これは可逆性という大きなメリットでもあります。再開する場合も、やめるときと同様、目に悪影響はありません。

まとめ:オルソケラトロジーは近視矯正の新しい選択肢

オルソケラトロジーは、就寝中に特殊なコンタクトレンズを装用し、角膜の形状を矯正する治療法です。

日中は裸眼で快適に過ごせる、手術不要で可逆性がある、子どもの近視進行抑制効果が期待できるなど、多くのメリットがあります。特に成長期の子どもや、スポーツを楽しむ方、職業上の理由でメガネやコンタクトレンズの装用が難しい方には優れた選択肢となります。

一方で、レンズの継続装用が必要、初期は視力が安定しにくい、強度近視や強度乱視には対応が難しい場合があるといったデメリットも理解しておく必要があります。

十川眼科大町院では、患者さん一人ひとりの目の状態やライフスタイルに合わせた最適な視力矯正方法をご提案しています。オルソケラトロジーについてもっと詳しく知りたい方、ご自身やお子さんに適応があるか確認したい方は、お気軽にご相談ください。

著者情報

医療法人光健会 理事長 十川健司

  • 日本眼科学会専門医・網膜硝子体学会所属
  • 医学博士・眼科手術学会所属
  • 視覚障害者用補装具適合判定医
  • ボトックス施注資格認定医