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白内障と仕事の両立|手術前後の注意点と復帰時期を専門医が解説

白内障手術を控えた方の「仕事」への不安

白内障の診断を受けて手術を勧められたとき、多くの方が真っ先に考えるのが「仕事はどうなるのか」という問題です。特に現役世代の方にとって、手術のために長期間休むことは現実的ではありません。職場への影響、収入面での心配、復帰後の業務への支障など、さまざまな不安が頭をよぎることでしょう。

実は、白内障手術は日帰りで完了する時代になっています。ただし、術後の過ごし方次第で回復の質が大きく変わるのも事実です。この記事では、白内障手術と仕事の両立について、手術前の準備から復帰時期の目安、職種別の注意点まで、実践的な情報をお伝えします。

白内障手術は「日帰り」が基本―入院不要の時代へ

現代の白内障手術は、医療技術の進歩により大きく変化しました。

かつては6mm程度の切開が必要でしたが、現在は2.4mm程度の極小切開で済みます。これは眼内レンズを折りたたんで挿入し、目の中で開く技術が確立されたためです。手術時間も10分程度と短時間で、多くのクリニックや病院で日帰り手術が主流となっています。

小さな切開創で済むようになったことで、かつて懸念されていた「駆逐性出血」などの重大なトラブルのリスクも大幅に低下しました。とはいえ、「昔よりリスクが低い=何の注意もいらない」というわけではありません。術後の過ごし方が、今後の見え方を左右する重要な要素になります。

手術当日の流れと帰宅後の注意

手術当日は、術後そのまま帰宅できます。ただし、目に保護用の眼帯をしているため、車の運転は絶対に避けてください。公共交通機関を利用するか、ご家族に送迎をお願いするのが安全です。

帰宅後は安静が基本。テレビやスマートフォンの使用は短時間なら問題ありませんが、長時間の使用は避けましょう。目をこすったり触ったりしないよう、特に注意が必要です。

術後の通院スケジュール

白内障手術後の経過観察は、感染や炎症を早期発見するために欠かせません。一般的な受診タイミングは以下の通りです。

  • 手術翌日(必須)
  • 2日目または3日目
  • 1週間後
  • 2週間後
  • 1ヶ月後

施設によって若干の違いはありますが、特に2日目・3日目の受診は感染症のチェックのために重要です。お仕事が忙しい方でも、この時期の受診は可能な限り優先していただきたいと考えています。何か異変があれば、すぐに連絡してください。

白内障手術後の仕事復帰の目安

結論から言えば、仕事内容によって復帰時期は大きく異なります。デスクワークであれば翌日から復帰可能ですが、力仕事や屋外作業の場合は1ヶ月間の安静が必要です。

デスクワーク・事務職の場合

身体に負荷がかからないデスクワークなら、翌日から復帰していただけます。パソコン作業も短時間であれば問題ありません。ただし、目をこすったり触ったりしないよう、常に意識してください。

長時間のパソコン作業をする場合は、まばたきの回数を意識して増やすこと、20分作業したら20秒ほど遠方を見て目を休めること、画面の明るさや文字サイズを調整することなどが推奨されます。

営業職・外回りの仕事の場合

歩き回ることが多い営業職や、運転を頻繁にする仕事の場合、術後1週間経ってからの復帰が目安です。運転に関しては、視力の回復状況を見て判断する必要があります。免許取得時と同様、視力と自覚的な見え方を基準に、医師と相談しながら再開時期を決めましょう。

力仕事・屋外作業の場合

重いものを持つ作業や屋外での仕事は、1ヶ月間は安静にする必要があります。重いものを持つとき、傷口が開いてしまう可能性があるからです。また、屋外で目にゴミが入ったり、患部に触れてしまった場合、感染症を患ってしまうリスクも高まります。

ほこりっぽい場所での作業は、目の傷から細菌に感染する可能性があるため、特に注意が必要です。どうしても作業が必要な場合は、保護メガネなどでしっかりガードしましょう。

日常生活への復帰―洗顔・入浴・運動のタイミング

仕事以外の日常生活についても、段階的に戻していく必要があります。

特に洗顔や洗髪は、しばらく控える必要があります。顔の汚れが気になる場合は、目の周りに水がかからないようにして、タオルで目元を避けて拭く程度にしましょう。

生活動作の復帰目安

以下は一般的な目安です。ただし、あくまで目安であり、術後の通院で診察を受けながら、主治医に相談することが大切です。

  • 翌日から可能:首下のみのシャワー、デスクワーク
  • 6日後から可能:首下のみの入浴
  • 1週間後から可能:洗髪、洗顔、アイメイク、髭剃り、軽いスポーツ
  • 1ヶ月後から可能:力仕事、激しいスポーツ

アウトドアや旅行、特に温泉旅行などは注意が必要です。診察状況から医師に判断してもらいましょう。運転に関しては期間に目安はなく、視力の状況で判断しますので、必ず医師に相談してください。

点眼薬の重要性

術後は、数種類の点眼薬が処方されます。一般的には以下の3種類です。

  • 抗菌薬の点眼:感染を防ぐ目的
  • ステロイド点眼:術後に必ず起こる炎症を鎮めるため
  • 非ステロイド系抗炎症点眼:黄斑部のむくみ・浮腫などを抑制

これらを1日4回や2回など、複数回に分けて1か月程度使用するのが一般的です。近年は手術技術の向上で感染リスクや炎症リスクが下がり、「目薬の使用は2週間程度でOK」とするクリニックもありますが、指示された通りに根気よく点眼を継続することが重要です。

手術前に準備しておくべきこと

スムーズな仕事復帰のためには、手術前の準備が鍵になります。

職場への事前連絡

まず、職場に手術の予定を伝えましょう。デスクワークであれば「翌日から復帰可能だが、通院が必要」と説明し、力仕事であれば「1ヶ月程度の休養が必要」と伝えてください。仕事内容を主治医に申告して、どのくらい安静期間が必要かを確認しておくことも大切です。

術後の通院スケジュールの確保

手術翌日、2〜3日目、1週間後、2週間後、1ヶ月後と、複数回の通院が必要です。特に翌日と2〜3日目の受診は感染症チェックのために重要なので、スケジュールを確保しておきましょう。

家族のサポート体制

手術当日は車の運転ができないため、送迎をお願いできる家族やタクシーの手配が必要です。また、術後数日間は家事などで無理をしないよう、家族の協力を得ておくと安心です。

眼鏡の準備

単焦点眼内レンズを選択した場合、遠くまたは近くのどちらかにピントを合わせるため、眼鏡が必要になる場合があります。多焦点眼内レンズであれば、複数の距離にピントを合わせることができ、眼鏡の必要性が少なくなりますが、費用面での検討も必要です。

よくある質問(Q&A)

Q1. 白内障手術後、すぐにパソコン作業はできますか?

短時間であれば翌日から可能です。ただし、長時間の作業は避け、こまめに休憩を取りながら行ってください。まばたきの回数を意識して増やし、画面の明るさや文字サイズを調整することも大切です。術後1〜2週間は、ドライアイ対策として点眼薬で保湿状態を整えましょう。

Q2. 両目を同時に手術できますか?

一般的には、片目ずつ手術を行います。これは、万が一のトラブルに備えるためです。片目の手術後、経過を見てから反対側の手術を行うのが安全です。通常、1週間から2週間程度の間隔を空けます。

Q3. 白内障手術後、視力はどのくらいで安定しますか?

多くの場合、術後1週間から1ヶ月程度で視力が安定してきます。ただし、個人差があり、炎症の程度や眼の状態によっても変わります。眼鏡の作り替えは、視力が安定してから行うのが一般的です。

Q4. 糖尿病がある場合、白内障手術は受けられますか?

糖尿病がある方でも、血糖コントロールが良好であれば手術は可能です。ただし、糖尿病の方は白内障の進行が早く、術後の炎症も起こりやすい傾向があります。主治医と眼科医の両方に相談しながら、適切なタイミングで手術を受けることが大切です。

Q5. 多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズ、どちらを選ぶべきですか?

これは患者さんのライフスタイルやご希望によって異なります。多焦点眼内レンズは、遠くから近くまで見える幅が広がり、眼鏡の必要性が少なくなりますが、費用が高額です。単焦点眼内レンズは保険適用で費用を抑えられますが、眼鏡が必要になる場合があります。それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、医師と相談しながら選択しましょう。

まとめ―安全な復帰のために

白内障手術は、現代では日帰りで完了する安全性の高い治療です。

デスクワークであれば翌日から復帰可能ですが、力仕事や屋外作業の場合は1ヶ月間の安静が必要です。仕事内容を主治医に申告し、適切な復帰時期を相談することが大切です。

術後の過ごし方が、今後の見え方を左右します。点眼薬を確実に使用し、目をこすったり触ったりしないこと、定期的な受診を欠かさないことが、良好な視力回復への鍵となります。

白内障手術についてさらに詳しく知りたい方は十川眼科にお気軽にご連絡ください。

著者情報

医療法人光健会 理事長 十川健司

  • 日本眼科学会専門医・網膜硝子体学会所属
  • 医学博士・眼科手術学会所属
  • 視覚障害者用補装具適合判定医
  • ボトックス施注資格認定医