白内障 予防|眼科専門医が教える今日から始める7つの対策

白内障は本当に予防できるのか?
白内障は加齢とともに誰にでも起こり得る病気です。80代ではほぼ100%の方に何らかの症状が見られます。早い方では40代から発症することも。ただし、進行を遅らせることは可能です。今日から始められる対策があります。
この記事では、眼科専門医として25年以上白内障治療に携わってきた経験から、科学的根拠に基づいた予防法をご紹介します。完全に防ぐことはできなくても、発症時期を遅らせたり、進行速度を緩やかにしたりすることは十分可能なのです。
白内障の原因を知ることが予防の第一歩
予防を語る前に、まず白内障がなぜ起こるのかを理解しましょう。
白内障は、目の中の水晶体が白く濁る病気です。水晶体はカメラのレンズのような役割を果たしており、透明であることで光を正しく屈折させ、網膜に像を結びます。この水晶体が濁ると、視界が暗くなったり、まぶしく感じたり、物がかすんで見えたりするのです。
加齢による酸化ストレスが主な原因
白内障の大半を占めるのが「加齢性白内障」です。年齢を重ねると、水晶体を構成するタンパク質が酸化によって変性します。卵の白身を加熱すると白く固まるのと似た現象が、目の中で起こっていると考えてください。一度変性したタンパク質は元に戻りません。
酸化ストレスを増大させる要因は様々です。紫外線、喫煙、不規則な生活習慣、糖尿病などの生活習慣病。これらが水晶体の老化を加速させます。
今日から始める白内障予防法
1. 点眼薬による進行抑制
白内障の進行を遅らせる点眼薬があります。「ピレノキシン点眼液」や「カタリンK点眼液」です。これらは白内障を引き起こすキノイド物質の生成を抑制し、水晶体の白濁を防ぐ効果があります。
ただし、点眼治療は進行防止が目的であり、完治させるものではありません。すでに濁った水晶体を透明に戻すことはできないのです。定期的な検査を受けながら、医師の指導のもとで使用することが肝要です。
初期段階で発見し、早めに点眼を始めることで、手術が必要になる時期を遅らせることができます。
2. 紫外線対策は色の薄いサングラスで
紫外線が水晶体に吸収されると、活性酸素が発生し酸化が促進されます。屋外で長時間過ごす方、特にスポーツや畑仕事をされる方は要注意です。
サングラスは「色の薄い紫外線カット率の高いもの」を選んでください。色が濃いサングラスは逆効果になることがあるのです。人間の瞳は暗いところで瞳孔が開き、より多くの光を取り込もうとします。紫外線カット機能のない濃い色のレンズでは、瞳孔が開いた状態で多くの紫外線を浴びてしまうのです。
選ぶ際は「紫外線透過率1.0%以下」や「紫外線カット率99%以上」という表示を確認しましょう。
3. 抗酸化作用のある食品を積極的に摂取
水晶体のタンパク質が酸化することで白内障が進行しますから、抗酸化作用を持つ栄養素を積極的に摂取することが予防に繋がります。特に以下の栄養素が重要です。
ビタミンC
焼きのり、緑茶、レモン、いちご、ブロッコリーなどに豊富です。水溶性ビタミンで加熱により分解されやすいため、生で食べられるものは生で摂取するのが理想的です。
ベータカロチン・ルテイン
ほうれん草、にんじん、かぼちゃ、ピーマンなどの緑黄色野菜に多く含まれます。強い抗酸化作用があり、目の健康維持に欠かせません。
ゼアキサンチン
オレンジジュース、ブロッコリー、とうもろこし、柿などに含まれます。ルテインと同様、黄斑部に存在して目を守る働きがあります。
これらの栄養素をバランスよく摂取することで、酸化ストレスから水晶体を守ることができます。
4. 糖尿病対策としての食生活改善
血液中の糖分が水晶体内にソルビトールという物質として蓄積し、浸透圧の変化により水分量が増加。これが白内障を引き起こすのです。糖尿病性白内障は進行が速いという特徴もあります。
栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。お菓子やジュース、お酒にも糖分が多く含まれているものがあります。糖質の取りすぎに注意し、血糖値のコントロールを意識しましょう。
生活習慣の改善で白内障リスクを下げる
5. 適度な運動で血流改善
運動不足は万病の元、と言いますが白内障予防にも当てはまります。
適度な運動により血流が改善され、目の組織にも十分な栄養と酸素が供給されます。これが白内障の予防に効果があると考えられています。また、生活習慣病の予防にもなりますから、一石二鳥です。
ウォーキング、軽いジョギング、水泳など、無理のない範囲で継続できる運動を選びましょう。ただし、屋外で運動する場合は紫外線対策を忘れずに。
6. 禁煙で白内障リスクを大幅に低減
喫煙は白内障の発症リスクを高めます。これは科学的に証明されています。
ニコチンが毛細血管を収縮させ、血流が悪くなります。さらに、抗酸化作用のあるビタミンCを破壊することも分かっています。つまり、喫煙は二重の意味で白内障のリスクを高めるのです。
禁煙することで、白内障の発症リスクは確実に低下します。すでに喫煙されている方は、今日から禁煙を検討してみてください。禁煙外来などのサポートを利用するのも一つの方法です。
7. 生活習慣病の予防と管理
高血圧、脂質異常症、心血管系疾患なども白内障のリスク要因となります。
酸化ストレスを増大させる要因として、不規則な生活習慣や睡眠不足も挙げられます。日ごろから規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠を取ることが重要です。
過度なアルコールの摂取も避けましょう。適量であれば問題ありませんが、飲み過ぎは体全体の健康を損ないます。
早期発見が何より重要な理由
どれだけ予防に努めても、加齢による白内障を完全に防ぐことはできません。
だからこそ、早期発見が鍵になります。初期段階で発見できれば、点眼治療により進行を遅らせることができます。手術が必要になる時期を何年も先延ばしにできる可能性があるのです。
40代以降の方は、年に一度は眼科検診を受けることをお勧めします。自覚症状がなくても、専門的な検査により初期の白内障を発見できることがあります。
当院では、白内障について熟知した視能訓練士が検査を担当し、多角的な視点で患者様の症状を把握する体制を整えています。初診から手術、術後まで一貫して診察・執刀しますので、途中で医師が替わることはありません。
白内障手術という選択肢について
予防に努めても、いずれ白内障が進行し日常生活に支障が出ることがあります。
その場合、手術が根本的な治療法となります。白内障手術では、白く濁った水晶体を粉砕・吸引除去し、代わりに眼内レンズを挿入します。眼内レンズは長期間使用しても健康上問題なく、一度手術をすれば白内障が再発することはありません。
当院では、患者様の不安を取り除くために2段階の麻酔を行い、安全で痛みの少ない日帰り白内障手術を実施しています。患者様の生活スタイルに合わせた治療計画をご提案いたします。
よくある質問(Q&A)
Q1. 白内障は完全に予防できますか?
残念ながら、現代の医学では白内障を100%予防する方法はありません。加齢による白内障は誰にでも起こり得る自然な老化現象です。ただし、発症を遅らせたり進行を緩やかにしたりすることは可能です。早期発見と進行予防が最も大切です。
Q2. 点眼薬だけで白内障は治りますか?
点眼薬は白内障の進行を遅らせる効果がありますが、完治させることはできません。すでに濁った水晶体を透明に戻すことは不可能です。白内障の根本治療は手術のみとなります。点眼治療は進行防止が目的であり、定期的な検査を受けながら使用することが重要です。
Q3. サングラスは色が濃い方が効果的ですか?
いいえ、むしろ逆です。色の薄い紫外線カット率の高いサングラスを選んでください。色が濃いレンズでは瞳孔が開き、紫外線カット機能がない場合は多くの紫外線を浴びてしまいます。「紫外線透過率1.0%以下」などの表示を確認し、性能を重視して選びましょう。
Q4. どのくらいの頻度で眼科検診を受けるべきですか?
40代以降の方は年に一度の眼科検診をお勧めします。自覚症状がなくても、専門的な検査により初期の白内障を発見できることがあります。すでに白内障と診断されている方は、医師の指示に従い定期的に検査を受けてください。
Q5. 白内障手術は痛いですか?
当院では2段階の麻酔を行い、痛みの少ない手術を実施しています。多くの患者様が「思ったより痛くなかった」とおっしゃいます。手術中の不安や痛みについては遠慮なくご相談ください。安心して治療を受けていただける体制を整えています。
まとめ:今日から始める白内障予防
白内障は加齢とともに誰にでも起こり得る病気です。完全な予防は難しいものの、発症を遅らせ進行を緩やかにすることは十分可能です。
今回ご紹介した
- 点眼薬による進行抑制
- 色の薄い紫外線カットサングラスの使用
- 抗酸化作用のある食品の積極的摂取
- 糖尿病対策としての食生活改善
- 適度な運動による血流改善
- 禁煙によるリスク低減
- 生活習慣病の予防と管理
そして何より重要なのは、定期的な眼科検診による早期発見です。初期段階で発見できれば、点眼治療により手術が必要になる時期を大幅に遅らせることができます。
白内障に関するご相談や検診をご希望の方は、十川眼科にお気軽にご連絡ください。


